停電でネットが止まる前に。台風シーズンに備えるネットワーク機器の停電対策
電気通信工事に携わっていると、台風の多い時期になると停電対策についての話題が増える印象があります。理由はシンプルで、停電が起きた瞬間に一番先に困るのが「通信」だからです。
会社の電話が繋がらない、社内システムにアクセスできない、防犯カメラの映像が途切れる。停電そのものよりも、そのあとに「情報が止まる」ことの方が、業務への影響としては大きいと感じています。学校やホテル、自治体施設のようにネットワーク機器の台数が多い施設では、影響範囲もそれだけ広くなりやすいところがあります。学校・ホテル・自治体のネットワーク工事でも触れていますが、こうした施設は機器点数が多い分、停電時に見えてくる課題も多くなります。
停電が起きたとき、ネットワーク機器まわりでは主に次のような影響が出ます。
ルーターやスイッチが止まれば、社内LANも外部との通信も途絶えます。監視カメラのレコーダー(NVR)が止まれば、録画も監視も一時的に機能しなくなります。ビジネスフォンやIP電話が止まれば、電話対応そのものができなくなる。さらに、サーバーやNAS(データ保存用の機器)は、電源が突然落ちることでデータの不整合や故障につながるリスクもあります。
停電が数分で復旧するのか、数時間続くのかによっても対応は変わります。ただ、どちらのケースでも「機器が正常にシャットダウンできるかどうか」は、その後の復旧のしやすさに関わってくるところです。
停電時や瞬間的な電圧低下(瞬停)の際に、内蔵バッテリーから一定時間電力を供給する機器です。その間に機器を安全にシャットダウンしたり、非常用発電機など別の電源に切り替えたりする「時間稼ぎ」の役割を担います。長時間の停電をカバーする常設電源ではない点に注意が必要です。
UPSを検討する際にまず出てくるのが「容量」の考え方です。UPSには「VA」や「W」という単位で出力容量が表示されており、接続する機器の消費電力の合計がこの範囲に収まるように選定します。ルーター・スイッチ・カメラのレコーダーなど、停電時に守りたい機器をあらかじめリストアップしておくと、必要な容量が見えやすくなります。
どれくらいの時間動かせるかは、バッテリーの容量と接続機器の消費電力によって変わるため、「何分もつか」は機種によって大きく差があります。カタログ上の数値は目安として確認しつつ、実際の運用環境で余裕を持った選定をすることが大切です。
VA(皮相電力)とW(有効電力)は近い概念ですが同じ数値ではありません。接続機器の合計消費電力に対して余裕を持った容量を選ぶのが基本で、具体的な選定は機器構成によって変わるため購入前に確認することをおすすめします。
すべての機器をUPSでカバーしようとすると、コストも設置スペースも膨らみます。まずは「止まると業務に直結する機器」から優先順位をつけるのが現実的です。コアとなるルーターやスイッチ、防犯カメラのレコーダーなどは優先度が高くなりやすいところです。この優先順位の付け方は、通信工事の見積もりの考え方とも重なる部分があります。通信工事の見積もりに差が出る理由でも触れていますが、機器構成の整理は費用にも直結してきます。
UPSは熱に弱い機器です。通信機器を収めるラックの中は熱がこもりやすいため、設置場所の温度や換気にも配慮が必要です。また、内蔵バッテリーは消耗品で、経年で劣化します。交換の目安は機種によって異なるため、購入時に確認し、定期的に状態をチェックしておく必要があります。
UPSの中には、停電を検知するとサーバーなどの機器を自動で安全にシャットダウンするソフトウェアと連携できるものがあります。無人の時間帯に停電が起きても機器へのダメージを抑えられるため、遠隔地に設備がある場合は特に検討する価値があります。
| 方式 | 特徴 | 向いている用途 |
|---|---|---|
| 常時商用給電方式 | 普段は電力会社の電気をそのまま供給し、停電時のみバッテリーに切り替わる | 比較的コストを抑えたい小規模な用途 |
| ラインインタラクティブ方式 | 電圧変動をある程度自動補正しながら給電する | 停電に加え瞬停・電圧変動にも備えたい用途 |
| 常時インバーター給電方式 | 常にバッテリーを経由して安定した電力を供給する | サーバーなど停止できない機器 |
稼働時間や対応可能な電力量は機種によって差があるため、まずは「守りたい機器」と「許容できる停止時間」を整理したうえで比較することをおすすめします。
台風の多い時期に入る前にできることは、大きく分けると3つです。
ひとつはバッテリーの状態確認です。UPS本体に劣化を知らせる表示が出ていないか、購入からの年数が交換目安に近づいていないかを確認します。ふたつめは配線とアースの確認です。屋外や倉庫など湿気の影響を受けやすい場所に設置している場合は特に注意が必要です。みっつめは動作テストです。実際に電源を落として、想定通りにUPSが切り替わるかを確認しておくと、本番でのトラブルを減らせます。
シーズン前の点検を毎年のルーティンにしておくことが、結果的に一番の備えになります。
現在の機器構成をお伺いした上で、必要な容量や設置環境に応じたUPSの考え方をご提案します。
ネットワーク機器・配線・電源まわりの現状を確認し、停電時のリスクが高い箇所を洗い出します。
優先順位をつけた機器構成や、シャットダウン設定を含めた停電対策の全体設計をお手伝いします。
継続的な設備管理という意味では、IT顧問サービスのような形で定期的に状態を見ていく方法もあります。台風シーズンだけでなく、年間を通じて機器の状態を把握しておくと、いざというときの対応もスムーズになります。
「何から手をつければいいかわからない」「今の設備で十分か確認したい」——現状の機器構成をお伺いした上でご提案します。